■【悲劇の名工】Varagnolo Ferruccio Padovano 1911 ヴァラニョーロ・フェルッチョ・パドヴァーノ 師ビジアック Bisiach


【悲劇の名工】Varagnolo Ferruccio Padovano 1911 ヴァラニョーロ・フェルッチョ・パドヴァーノ 師ビジアック Bisiach
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ヴァラニョーロ・フェルッチオの経歴・生涯 ヴァラニョーロ・フェルッチオ(Ferruccio Varagnolo, 1880年生まれ - 1916年没)は、イタリア・パドヴァ出身のヴァイオリン製作家(リュート工房の名匠)です。若い頃にミラノで名工レアンドロ・ビザッキ(Leandro Bisiach)の工房で修業を積み、同工房の弟子兼協力者として腕を磨きました。その後しばらくミラノで制作を続けた後、フランス・パリに渡って活動を行ったとされています。しかし精神的な病を患い、最終的には30代半ばという若さで精神科病院でその短い生涯を閉じました。死去の地については諸説ありますが、1916年に逝去したことから第一次世界大戦中のフランス東部で亡くなったとも、あるいは帰国後にイタリアで亡くなったとも言われます。いずれにせよ、短命ながらも優れた才能を発揮した「悲劇の名工」と評されます。 製作スタイルと作品の特徴 フェルッチオの製作した楽器は現存数が少なく、主にバイオリンとヴィオラのみが知られています。短いキャリアの中で制作本数は決して多くありませんが、そのどれもが非常に優れた技巧と音響特性を備えた逸品として評価されています。フェルッチオの楽器は音色の暖かみと深みが特徴であり、その豊かな響きは「グァルネリにも匹敵しうる」と評する声もあります。製作当時に用いられた材料も上質で、厳選された木材(表板のスプルースや裏板・側板のメイプルなど)が使われています。ニス(ワニス)は濃い赤褐色系で、美しい光沢と深みのある色調を持ち、経年によって表面に細かなクラック(クレージング)が入ることもあります。この赤みの強いニスや高度な木工技術は、師であるビザッキの影響も感じさせるものです。 製作様式としては、17〜18世紀のクラシックモデル(ストラディバリやグァルネリなど)を基にしつつ、本人の解釈が加えられています。ただし一部の資料では、モデルの採用が必ずしも一貫しておらず「古典的モデルに対してやや不統一な作風」と評されることもあります。 具体的な造形の特徴として、アーチング(板の丸み)は比較的高めで、エッジの掘り込み(フチの溝彫り)は深く力強い形状を示す傾向があります。f 字孔(エフ孔)は古典的な形状でバランスよく配置され、音響的にも優れた開放性を持っています。スクロール(渦巻き飾り)は手作業の味わいがあり、巻きの渦が完全な同心円を描かず僅かに不均一なところに手工品としての魅力が感じられます。しかし、この点についてフランスの名鑑著者ヴァンヌス(Rene Vannes)は「真の芸術家による仕事である」と高く評価しており、全体としてフェルッチオの作品は細部の造形も含め芸術性の高いものと見なされています。彼はまた修復家としての腕前も高く評価され、生前は古い名器の修復にも携わっていたと言われます。 1911年製のヴァイオリンとラベルの解読 フェルッチオが1911年に製作したとされるバイオリンは、彼の円熟期の作品の一つに位置付けられます。1911年製のラベルには一般に以下のような表記があります: Varagnolo Ferruccio Padovano alunno di Leandro Bisiach fece in Milano l’anno 1911 これを日本語に訳すと「パドヴァ出身のフェルッチオ・ヴァラニョーロ(ヴァラニョロ)、レアンドロ・ビザッキの弟子、1911年にミラノにて製作」という意味になります。ラベル中の「Padovano(パドヴァーノ)」は「パドヴァの(パドヴァ出身の)」という意で、制作者の出自を示す形容詞です。また「alunno di〜」は「〜の高弟(門弟)」という意味で、師匠であるビザッキの名を誇らしく記しています。「fece in Milano l’anno 1911」は「1911年にミラノで製作した」の意です。このように師弟関係や出生地まで明記したラベルからは、製作家フェルッチオの誇りとアイデンティティが読み取れます。実際、彼の楽器にはこの定型文が印刷されたラベルが貼られており、内部からそれを確認できます。 なお、フェルッチオのラベル文言には時期によって若干の違いがあります。初期の作品では出身地を「Padovano」ではなく「Veneziano(ヴェネツィアーノ)」すなわち「ヴェネツィアの(人)」と表記していた例もあります。例えば1901年製作**のラベルには「Varagnolo Ferruccio Veneziano, alunno di Leandro Bisiach, fece in Milano, anno 1901」(ヴェネツィア人フェルッチオ・ヴァラニョーロ…1901年ミラノにて製作)という表記が確認されています。一方、1910年前後の作品では「Padovano」に変わっており、出身地表示を故郷パドヴァに改めたようです。この変更の理由は定かではありませんが、おそらく本人の自己認識や販売上の意図(例えばヴェネツィアよりパドヴァ出身であることを明確にしたかった等)が反映されたものと考えられます。 ラベルの物理的特徴と鑑定ポイント フェルッチオのラベルは印刷によって製作されており、20世紀初頭当時の一般的な方式である機械漉き紙(ウーブ紙)に活版印刷で文字が刷られています。1850年以降のラベルに典型的なこの木材パルプ由来の紙には、18世紀以前の手漉き紙に見られる「簀の目(laid lines)」がなく、代わりに平滑な表面を持つのが特徴です。活字の輪郭は若干滲みやボヤケが生じやすく、古い手漉き紙に比べるとシャープさに欠ける場合があります。もっとも、フェルッチオのラベル印字は当時の標準的な印刷品質で、肉眼ではっきり読み取れる明朝体風の書体が用いられています。約110年以上を経たオリジナルのラベルは、紙とニスや木部の相互作用で色味が経年変化し、木の内部と同系統の薄茶色〜褐色に沈着しています。ラベル紙は当初は薄いクリーム色だったと推測されますが、現在は周囲の木材と似たセピア色に変色しているのが普通です。エッジ(縁)は木板にしっかりと接着され、紙の端部が木と滑らかになじんでいます。また紙質自体も、新しい紙を人工的に汚しただけのものは、真の古紙とは異なる繊維の様子や酸化具合を示します。真正なラベルには年月相応の均一な変色と古色(ふるいろ)が感じられるはずです。 鑑定書はありません。真贋の保証はできません。 真贋の問題と流通・価値 フェルッチオの作品は稀少性ゆえ、後世において贋作やラベル偽装が行われた例も報告されています。彼の没後、同じくミラノで活動していたチェレスティーノ・ファロット(Celestino Farotto)という製作家が、ヴァラニョーロ名義の楽器を複数製作した可能性が指摘されています。実際、1960年頃に作られたとされるファロットのビオラから「Varagnolo Ferruccio Padovano...1915」と記載のあるラベルが見つかっており、これはフェルッチオの1915年製作を装った偽ラベルの一例と考えられます。また、市場には存命年代を超える年号を持つフェルッチオ名義の楽器も存在します。例えば「1926年製作」のラベルが貼られたヴァイオリンがオークションに出品された例がありますが、当然ながらフェルッチオ自身は1916年に没しているため真作であるはずがなく、このようなものは後年の工房製コピーかラベル貼替えによる贋作と断定されます。フェルッチオ本来の作と異なり、これら贋作は音質や工作の精度で見劣りし、専門家の鑑定では見破られることが多いです。真贋鑑定では上述のラベルの性状チェックに加え、楽器そのもののスタイル(アーチの高さ、ニスの組成や色調、彫刻の癖など)がフェルッチオの真作と合致するか詳細に検証されます。 フェルッチオのオリジナル作品は、現在ではコレクターや演奏家の垂涎の的であり、市場に出ることはまれですが、これまでに欧米の主なオークションで何度も取引されています。近年では2023年6月にフェルッチオ製バイオリンがオークションに出品され、56,530ドル(約800万円)もの高値で落札された記録があります。過去の取引例では概ね数万ドル台(数百万円相当)で推移しており、状態や由来次第ではそれ以上の価格となることもあります。2015年にはオーストラリアで長年忘れられていた1909年製のヴァイオリンが発見され、修復後に約65,000ドル(現在のレートで970万円超)の価値があると見積もられたケースも報じられました。このようにフェルッチオの楽器は投機的価値も高く評価されていますが、それ以上に稀少で文化的価値の高い工芸作品として位置づけられています。 現時点で、フェルッチオの楽器が公的な音楽博物館に収蔵・展示されている例は確認されていません。ストラディバリウスのような著名古典名器とは異なり、20世紀初頭の製作家である彼の作品は主に個人所有となっているようです。しかし、その音響的・歴史的価値から、熱心な演奏家たちの手で実際に演奏に供され、その音色が生かされています。例えば米国のヴィオラ奏者スコット・ロールズ氏は1914年製のヴァラニョーロ製ビオラを愛用しており、その豊かな響きで室内楽やソロ演奏に活躍しています。同じくヴィオラ奏者のマイケル・ホール氏もフェルッチオ作のビオラを所有し、演奏活動で使用しています。こうした現代のプロ奏者による使用は、フェルッチオの楽器が今なお実用的価値と芸術性を兼ね備えている証と言えるでしょう。 フェルッチオ・ヴァラニョーロは、その短い生涯にもかかわらず20世紀初頭イタリアン・ヴァイオリン製作史において特筆すべき存在です。師ビザッキ譲りの高い技術力と美意識を持ちながら、自身の個性も加味した作品は「真の芸術家による仕事」と称えられました。現代では専門書やカタログ(例えばエリック・ブロットの著書『20世紀イタリアの弦楽器製作 1860-1960』等)にもその名が収録され、専門家の間で再評価が進んでいます。1911年製のヴァイオリンは、まさに彼の円熟期の逸品として、その伝統と創意が結実した歴史的資料と言えるでしょう。ラベルの分析や楽器そのものの調査を通じて、その真贋や由来、技術的特徴を解明することは、当時の製作環境や流派を知る手がかりにもなります。フェルッチオ・ヴァラニョーロの作品は、数こそ少ないものの、現在に伝わる音の遺産として貴重であり、今後も収集家・研究者・演奏家によってその価値が伝承されていくことでしょう。鑑定書はありません。真贋の保証はできません。ラベルドということでご理解お願いします。

【悲劇の名工】Varagnolo Ferruccio Padovano 1911 ヴァラニョーロ・フェルッチョ・パドヴァーノ 師ビジアック Bisiach

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